子供の成長の過程で「9歳の壁」というものがあることを知っていますか?
イヤイヤ期や思春期のように、多くの子どもに訪れる試練の時期なのですが恥ずかしながら私は「9歳の壁」について最近知りました。
しかも9歳の壁っていう言葉はもともと障害児保育の世界で言われ始めて、最近よく知られるようになった定型発達の子たちの9歳の壁とはちょっとちがう所があるようで。
うちには自閉症スペクトラムの娘と定型発達の息子(今まさに9歳)がいるので、親としてはちがいをちゃんと理解しておきたいところです。
9歳の壁の本来の意味と、乗り越えるための親が心がけた方がいいことについて考えてみました。
目次
そもそも9歳の壁という言葉が生まれたのは障害児保育からだったとか
まず障害児保育でいう9歳の壁の意味は、定型発達のそれとは別物です。
- 言葉の獲得は9歳までが勝負
- 軽度知的障害の場合9歳程度の知能・学力までは習得できてもそれ以上は難しくなる
- 9歳以降の学習は基礎が分かった上で抽象的な内容が入ってくるため
- 家事や買い物、簡単な計算なら9歳の知能でも可能
9歳の長男には「ちょっと近くのスーパーまでこれとこれ買ってきて」と頼んだり、切符を自分で買って一駅先の駅まで一人で行かせることもできる。
でもそのままの知能で働いたり、生活したりってなると…相当教え込まないと難しいでしょうね。
娘の成長をあきためたくはないですが、小4以降の学習を無理に教えてもこの先理解できないことも覚悟しておかなければと思いました。
また、「9歳の壁」の言葉の命名
「聾学校の子ども達は小学校低学年(9歳頃)までは健聴児と同じように発達はするが、高学年になってくると学習が具体的なものから抽象的な内容になるため、学習面や言語面の発達において乗り越えられない壁につきあたることが多い」
という考え方が、一般的にも広がっていったといわれています。
耳が聞こえないハンデのある子に限らず、定型発達といわれている子供たちの中にも9歳辺りから勉強が難しくなるという子がでてくるんですね。
定型発達の子でもいわれている9歳の壁とは?
娘のように知的に遅れがある子の場合の「9歳の壁」は先ほど説明した通り。
一方で、息子のように一見発達に遅れがないようにみえる子でもつまずくことがある9歳前後の時期の特徴を学習面と生活面に分けてみていきましょう。
学習面
小学校低学年までは100点がとれていたような子が、高学年になって急に分からないといってクラスで落ちこぼれになってしまったというケースがあります。
発達障害のある子とちがうのは、「小3までは成績が良かった」という点。
定型発達なのに9歳の壁にぶちあたってしまうのは、考える力を養わずに計算や暗記をひたすら早くトレーニングすることを優先する学習法をしてきた子に多いといわれています。
たとえばですが文章問題も最初から最後まで読ませずに、「合わせて~?」「ちがいは~?」だけ見れば足し算か引き算かが分かれば解ける!
などといった中途半端な説明の仕方しかしてもらえず、スピード重視で数をこなしていくやり方しかしてこなかった可能性があります。
そんな指導では考えなくても直感だけで答える子=本質を分かっていないのにできる子になってしまいます。
人の成長は一般的に、9歳前後で単純な計算しか理解できなかったのが、論理的思考や抽象的思考が必要となる文数や文章問題などの複雑な問題が理解できるようになります。
しかし、小3までに頭の中で色んなことを考えて答えを出すという経験が少ない子は、小4になって思考力が必要な問題が出た時にさっぱり答えられないという状態になってしまうのです。
単純で機械的な考え方から抽象的で論理的な考え方へステップアップできない子供たちのことを巷では「9歳の壁」と言ったりします。
生活面
小3になると周りから中学年はいよいよギャングエイジだねという言葉が聞こえてきます。
思春期一歩手前の、親よりも友達との世界を気にし始める時期です。
自分と比べて周りの子は優れているのか・劣っているのかを比べるように。
よくいえば、自分だけのことしか考えられなかったのが、周りの状況がよく見えるようになったということですよね。
同時に、自分は周りからどう見られているのかを気にし始める時期でもあります。
- 皆で仲良くから、好きな子同士でグループを作るようになる
- グループ以外の子と仲良くしない、いじめに発展することもある
- 大人ぶって言葉遣いが変わったりすることがある
- 放課後にクラブが始まり初めての上下関係にとまどう
などなど、書き出せばきりがありませんが子供によっては周りの子達の急な成長についていけなくて悩む子もでてきます。
9歳の壁が来る前の親の心がけ3つ
【「9歳の壁」をどう突破していくか?絶対学力】という本を参考に、子供が9歳になるまで親が気をつけたいこと3つをまとめました。
母親の情緒が安定していること
子育ては母親が子供といる時間の長さは関係ないと考えます。大切なのは一緒に過ごした長さではなく、少ない時間でも親の気持ちが安定している状態で子供と関われるかどうかです。
仕事がストレス発散になるなら、保育園に子供を預けて働いた方が親の精神衛生上良いでしょう。
専業主婦でも子供と24時間一緒で息が詰まるのなら、たまに一時保育に預けるぐらいで罪悪感を感じる必要なんてありません。
親の気持ちが安定していると、不思議と子供の情緒も安定するそうです。物事を十分に吸収するためには情緒が安定していることが大前提です。
私も2歳差育児でいっぱいいっぱいな時期は、週一回保育園の一時保育に子供を預けてイライラを溜めないようにしていました。
親も頑張り過ぎないで大らかな気持ちでいることが子供の健全な発達につながるという訳ですね。
先取りや反復学習より少量の文章問題が大事
低学年のうちは計算を速く正確に解けるようになることより、考える力=思考力をつけておくことが重要です。
考える力をつけるためには、単調な計算問題や漢字の書き取りを何回も何回も繰り返すだけでは身につきません。
ゆっくりペースでもいいので、50問の計算問題よりも3問の文章問題をじっくり考えて答えを導き出すことで、高学年で必要になる思考力がついていきます。
また、表面的にさらっと理解しただけで先取り学習をどんどんしていくやり方もおすすめしません。
低学年でやる学習内容は一見簡単にみえますが、たとえば小3ぐらいで学習する長さや量の単位(メートル・センチ・ミリ)(リットル・デシリットルなど)を本当に全て把握できているかというと、分かるという子は少ないのではないでしょうか。
中途半端に分かったつもりで新しい知識をどんどん入れていくより、同じ単元でも質問を変えた問題をもう一度解いてみることの方が基礎力や思考力は強くなっていくでしょう。
読み聞かせは9歳までしてあげる
文章問題の意味を理解する力は、「本を読んで内容を理解できるかということ」にもつながっているのは明らかですよね。
読み聞かせは良いっていいますが小学生になってまでと私もあまり長男にはしてきませんでした。
でも短い物語でもいいから読み聞かせをしてあがることって今さらながら大事なのかなと考え直し、最近図書館に子供を連れて一緒に行くようになりました。
「絶対学力」の著者も、読み聞かせは5歳前後から9歳前後が一番大事と提言しています!
- 自分で読むこと(自分で読む)
- 聞いて楽しむこと(親が読み聞かせる)
は全くちがうことだということを親は分かっておくべきだといいます。
小学生に上がると簡単な漢字を習ってやっと「自分で読む」ことができるようになりますよね。でもこの時点では読みながら物語を楽しむなんて高度なテクニックができる子って少ないです。
低学年でいう読書とは、単に発音練習してるだけのことで物語をイメージして楽しむ想像力までは養われません。
もちろん繰り返し文章を追うことで読むスピードは速くなるメリットはあります。
でも前述したように9歳までに身に着けておきたいのはスピードや知識の量じゃなくて「考える力」なんですよね。
だから少なくとも9歳までは親が読み聞かせをしてあげて、子供の想像力を上げる手助けをしてあげて欲しいなって思います。
また、長男が通い始めたプログラミング教室も、想像力や論理的思考を育むメリットがあるといわれています。
小学校の授業では高学年から始まるプログラミング教育ですが、論理的思考力を鍛えるといった目的であれば、習い事で低学年から始めた方が理想的かなと思います。
気づいた今日から変えていけばいい
文字を追うことが苦手なASDの娘にばかり本を読み聞かせしていた自分に大反省です。
なんでも早く終わらせてしまう兄はつい本人のペースに任せてしまっています。
もうすぐ10歳の誕生日を迎える息子は幸い活字嫌いにはなっていませんが、4年生に上がって割り算の筆算に苦戦中。
今まさに生活面でも学習面でも9歳の壁の高さを実感していることでしょう。
娘が9歳になる頃、学習面よりも周りの子達とのちがいに苦しむことになるかと思うと心配になりますが、2年後の将来をうじうじ悩んでいても仕方ありませんよね。
先生にはみんなのペースに追いつくことよりも本人の間違えた問題を間違えなくなるまでやらせることを、今日の連絡帳に書いて持っていかせました。
何が正解かどうかなんて分からないけど、今私がサポートできることを考えてやるのみ!
自分が苦手な所だけポイントを抑えてオーダーメイドで問題を作ってくれるタブレット学習に注目しています。定型発達の子にもおすすめ。娘が体験した時の様子を下の記事にまとめています。